解りやすい!下水道工事の見積解説
- 公開日:2021年5月27日
- 最終更新日:2023年4月10日
下水道工事見積の詳細を説明します。この見積書は(株)創研の見積書を基準に説明しています。
他の会社では見積の表記が異なる事もあると思いますが、大きな違いは無いと考えます。他の会社で見積を取った方も参考にして下さい。
浄化槽廃止工事
既存の浄化槽を廃止し、本下水(公共桝に接続)にする為の工事です。浄化槽の種類や大きさ (人槽) によって廃止工事の内容が変わり、費用が変わります。
費用の違いは、以下の内容から算出されます。
浄化槽の種類
浄化槽は「全ばっ気型」や「分離接触ばっ気型」と「合併処理浄化槽」などがあり、浄化槽の種類によって廃止工事の作業内容が違います。
タンクの上部をカットする作業費用、タンクの中の部材や装置を取り出す作業、それぞれを処分する費用など、浄化槽の種類によってさまざまな処分工程があります。
この処分工程によって作業の手間 (人件費) が変わり、その手間に合わせて金額が決まります。
浄化層の種類についてはこちらから「浄化槽に種類があるんですか?」
浄化槽の人槽
浄化槽の人槽によってタンクの大きさが変わります。5人槽よりも7人槽の方がタンクは大きく、浄化槽を埋め戻す際に使用する土の量も多くなります。
- 分離接触ばっ気型の5人槽 約2㎥の土が必要。2tトラック1台分。
- 合併処理浄化槽の5人槽 約3㎥の土が必要。2tトラック2台分。
浄化槽が大きくなるほど土を取りに行く手間も土を浄化槽に入れて埋めていく手間も増えていきます。その為、人槽によって使用する土の量とその手間を勘案して単価が決まってきます。
浄化槽の人槽についてはこちらから「浄化槽の大きさの違いは何?」
残材処分費
下水道工事は本下水管に接続する為、浄化槽の廃止工事と一部(又は全部)の排水の経路を変える配管工事を行います。その際に発生する残材を処分する費用です。残材には
- 既存の排水管や桝の撤去が発生する事があり、その撤去した部材(配管や塩ビ桝、コンクリート桝、浄化槽の部材等)が残材になります。
- 配管経路上の植物の伐採したものや根切り等をした植物
- 駐車場や玄関前のコンクリートやタイルを壊して、配管や浄化槽の廃止工事をした時の廃材。する場合は、壊したコンクリート等を処分します。これらの処分費用も残材処分費として算出されます。
以上の3点にあるように、工事をする上で処分しなければならない部材の処分費用です。
想定される、残材料の量や重さ、大きさによって金額がきまります。
塩化ビニール管
配管工事の際にかかる費用です。
排水管を新たに設置する工事です。配管によって、費用が変わります。金額については塩化ビニール管の太さと距離によって単価が決まり、算出されます。
ただし、配管工事は2パーセントの勾配を確保して作業していきます。配管の距離が長くなれば、勾配の為に深く掘る必要があります。
深く掘るのは大変な作業になりますので、掘る深さによって単価が変わります。
※ 創研では~1,500mmまでとそれ以上で単価が変わります。勿論2,000mmと深くなるほど単価は変わっていきます。
配管工事についてはこちらの記事にて詳しく解説「下水道工事の配管の選び方と勾配の話」
排水管切替工
新しく設置する桝に家の中から出てきている配管を接続する作業です。
桝
桝の種類により価格が変わります。桝の種類についてはこちらで詳しく説明しています。「桝とはなんですか?」
それぞれの桝を設置する時の深さによっても金額は変わります。桝を設置する為に深く掘る必要があれば、作業が大変になる分費用が上がります。
桝の種類は物代で、深さは手間代になります。
管止め
使用しなくなった管の閉塞作業です。
コンクリート工事
コンクリート工事は「カッター工」「斫り工」「コンクリート復旧工」の3工程があります。
工事の方法についてはこちらを参照下さい。「下水道切替工事で行うコンクリート工事はどんな工事?」
ここではコンクリート工事の費用について解説していきます。
カッター工
基本、手間賃です。費用についてはカッターをいれて、コンクリートをカットした距離で決まります。
斫り工
カッター工同様に基本は手間賃です。壊した範囲(面積)で金額は決まります。ただし、解体するコンクリートの厚さが通常以上(10cm~15cm)に厚い場合は斫りの単価は上がります。厚さによって単価が決まります。
コンクリートの復旧工
復旧の手間賃とメッシュとコンクリートの材料代です。基本は復旧の面積で単価が決まります。タイルで復旧する時は手間が余計にかかります。タイルの材料代もかかる為、タイル工事はコンクリート工事よりも単価は高くなります。
砂利移動戻し、敷石移動戻し
配管を新設する際、配管経路に障害物がある時があります。下水道の配管は勾配を付けて、土を掘っていかなければならないので障害物を移動させて、配管の新設後にその障害物を戻す作業の金額です。
砂利は移動せずにそのまま掘り進めていく事が可能ですが、復旧時には砂利と堀った土が混ざって一緒になり、砂利の分別がつかなくなります。
砂利で復旧しなくてよい場合は費用が掛かりませんが、砂利を分別して、工事後に砂利として復旧させる場合は移動戻しが必要となります。
いずれの移動戻しも移動させる障害物の量と重さ、更に一時保存させる場所までの距離で単価が決まります。
根切り工
配管を新設する際、木の近くに配管経路を取る場合は木の根が障害物になります。
この項目は障害物となる根をカットする作業代です。
小さな木の場合はスコップで掘っている時に根が切れていきますので、根切り工代は掛かりません。しかし、大きな木の根の場合は有償になります。
根切りした場合の問題点 (一定期間経過後)
- 根切りした木が枯れる
- 木の成長が止まる
いずれにして時間がたたないと解りません。根切をすると枯れてしまう可能性がある事は承知しておく必要があります。
これは根切り工が発生しない場合でも土を掘っているのであれば、その近くの植物はすべて枯れる可能性はあります。
大切な樹木の場合は造園屋さんに依頼して移動させた方が良いでしょう。
申請手続費
この項目は申請業務に関する費用です。
下水道直結工事は自治体の許可の元に行う公共工事です。
その為、お客様や工事店の都合で工事は出来ず、事前に役所へ工事の申請が必要になります。
工事の申請には汚水や雨水をどういう経路で排水するのか、廃止する浄化槽の内容や外水道の排水処理方法、工事の完了の報告書、下水道開始の報告など、多岐に渡り工事内容の申請が必要になります。
お客様が署名・捺印をする用紙もたくさんあります (自治体によって申請する用紙の種類や枚数は違います)。
工事が終了した後には工事完了報告書も提出します。これらはオンラインではできないので、全て自治体の下水道課に出向き、書類の提出が必要です。これら面倒な事務手続きも全て含まれています。
まとめ
以上が下水道工事見積の詳細になります。
項目はもっとたくさんありますが、代表的な項目をご説明致しました。他社でも同じような項目になりますが、名称が異なる場合があります。
見積書にこれ以外の項目があった場合や名称がだいぶ違うと思う場合は納得がいくまで、担当者に確認して下さい。
金額については、材料代というよりも手間代・又は人工代がほとんどです。
金額を見て、『高いな!』とか『安い!』と感じた時は、ご自分でその作業をするイメージをしてみて下さい。重い石を運んで、スコップで土を掘る事をご自分でやるのにどの位の時間と労力(身体のきつさ)を考えて金額の妥当性をご検討ください。下水道工事は土の中に埋めてしまい、最終的には完成の内容が見えなくなります。手抜きをしても分かりにくい工事です。安すぎる金額は魅力的ではありますが、結果、作業員の手間を減らしている事になります。よく考えて金額を検討して下さい。